株式会社弘電社 コベルコ建機
クレーン施工計画シミュレーションソフトの活用がもたらす、安全性・信頼性の向上とコストダウン、高効率化
                株式会社弘電社
                技術戦略部 技術開発課 主事 村井 克弥 氏
                技術戦略部 技術開発課 山口 ひより 氏
                総務部 広報 永澤 隆幸 氏
              
                多種多様な建物の電気設備を設計、施工することをはじめ、発電所や送電設備の社会インフラの維持・改善などの案件も手掛ける弘電社。三菱電機のグループ会社として、電気を「つくる」から「つなぐ」「つかう」までをトータルサポートするエンジニアリングカンパニーだ。
                電気設備工事における技術力と豊富な経験を持つ同社だが、クライアントや現場のさまざまなニーズに対して、さらに応えるために導入したのが、コベルコ建機の提供するクレーン施工計画シミュレーションソフト「K-D2 PLANNER®」である。
                クレーン施工計画を最適化する、直感的な操作性と建設機械メーカーならではのリアルなシミュレーション機能で、弘電社では導入まもない段階から効率性を大きく向上させている。技術戦略部技術開発課 主事 村井克弥氏、山口ひより氏、総務部の永澤隆幸氏に導入の背景や実際の活用効果について詳しく話を聞いた。
              
クレーン計画の課題と導入のきっかけ
弘電社は、オフィスビルや病院、工場、公共施設といった多様な建物で高度な電気設備を設計・施工してきた実績を持つ企業である。その業務の中では、キュービクル(キュービクル式高圧受電設備)など重量物の搬入・据付が発生する場面も少なくない。特に高層ビルや狭小敷地、周辺が立て込んだ環境下での施工では、クレーンを使った計画が作業全体を左右する。クレーン計画が不十分であれば、現場での安全性低下や作業遅延、さらにはコスト増大につながりかねない。
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                      株式会社弘電社 
 技術戦略部 技術開発課 主事
 村井 克弥 氏
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                      株式会社弘電社 
 技術戦略部 技術開発課
 山口 ひより 氏
しかし、弘電社で行っていた過去のクレーン計画の検討方法は必ずしも十分とはいえなかったという。技術戦略部技術開発課の村井克弥氏と山口ひより氏は「これまではゼネコンに依頼したり、クレーンメーカーにクレーンのスペックを確認しながら2D図面で検討を進めたりしていました。どうしても安全性が第一ですから過剰なスペックにしがちでしたし、不明瞭な箇所がありながら工事日を迎えることもしばしばありました。その結果、大きなクレーンのコストがかさむことがありますし、当日に作業内容の変更が出るということも起こっていたのです」と語る。
この課題に対して、弘電社が注目したのがコベルコ建機が開発・提供している「K-D2 PLANNER®」である。技術戦略部はDXの促進、BIMの社内展開を目的として設立された部署であり、BIMソフトのRevitを用いた業務効率化や施工精度の向上を模索していた。その過程で2024年11月、他社からの紹介を通じてK-D2 PLANNERを知り、コベルコ建機が提供している導入前支援を受ける運びとなった。「隣のBIM推進課では図面やBIMモデルを作成していますが、私たちはRevitやRevitアドインソフトの活用や、点群データを用いたモデル化などを実際に業務に取り入れ、社内で標準化する方法を模索しています。K-D2 PLANNERには、3Dで正確な検討が工事前に行えることに期待して、導入の検討を開始しました」と村井氏はいう。
 
                      総務部 広報 永澤 隆幸 氏
狭隘条件を克服した本社ビル改修工事と広がる活用
導入直後から成果が現れたのが、東京・銀座にある同社本社ビルでのキュービクル改修工事だった。この工事では、大型のキュービクルを屋上に搬入する必要があったが、現場周辺は繁華街特有の狭隘な道路環境であり、搬入ルートの確保に難航しそうな状況であった。さらに屋上は鉄骨で組まれた目隠しで囲まれ、太陽光パネルも設置されていた。2Dの検討では読み切れない課題が、山積していたのである。村井氏は「断面で見ると200mm程度の余裕しかない箇所もあり、非常に繊細な検討が必要でした」と語る。従来であれば現場で実物を持ち込んでから初めて干渉に気づく可能性もあり、安全性と効率性の両立が大きな懸念となっていた。
 
                   
                  
                  そこで屋上と周辺の道路上空にある信号機や看板などの点群データを取得した上で、K-D2 PLANNERを活用しBIMモデルと統合した詳細なクレーンシミュレーションを実施。クレーンの配置位置、またブームの長さや角度、旋回動作を繰り返し検証することで、干渉を避けるために太陽光パネルを撤去しなければならないことなどが事前に明らかになった。「これまでであれば当日になってようやく判断できた課題が、事前に細かく把握できました。その結果、7時間を見込んでいた作業を、わずか3時間半で完了できたのです」と村井氏は振り返る。
                  現場の作業員からも高い評価を得た。村井氏は「こちらで詳細な検討をしたことで、当日は迷うことなくスムーズに作業を進められると感謝されました」という。点群撮影からシミュレーション完了までに要した期間も3日程度であり、従来と比較して大幅な効率化が実現した。
                
 
                  導入直後の本社改修工事で大きな成果を上げたことで社内外からの信頼を得た同社は、K-D2 PLANNERの適用範囲を拡大し、親会社である三菱電機の工場更新工事やその他もデータセンター、大型商業施設といった案件でもK-D2 PLANNERを積極的に活用しているという。「新築の設計案件で『屋上に発電機を設置した場合、併せて将来の更新工事ができるかどうかも事前に検討してほしい』という相談がありました。私たちがK-D2 PLANNERでシミュレーションしたところ、屋上設置では更新工事は困難ということがわかり、先を見据えて地上に設置する計画に変更することになりました。先に詳細に検討しリスク回避ができるのは、改修でも新築でも非常に大きなメリットです」と村井氏は強調する。
検討作業にかかる時間も大幅に短縮された。従来はクレーン施工計画検討の為に必要なクレーン性能表の情報収集は、各社クレーンメーカーに電話で問い合わせたり、ホームページで検索するなど、かなりの時間を費やしていたが、K-D2 PLANNERがあればこのような作業は不要となり、いまではソフト上で瞬時に比較検討が可能だ。例えば「70トンのクレーンを想定しているときに、60トンや80トンではどうか」といったシミュレーションをすぐに実施でき、過剰スペックを避けつつ最適なクレーン選定が可能になった。また本社改修工事の打ち合わせ中に既存の風力発電用のプロペラ撤去の話が持ち上がり、即座にK-D2 PLANNERでシミュレーションを行ったところ、その場で的確な回答ができたという。
 
                  信頼を勝ち得る説得力と今後の展開
K-D2 PLANNERには国内主要メーカーのクレーンデータが豊富に搭載されている点も大きな利点だ。「自分たちでカタログを探す必要がなく、性能や作業範囲、荷重条件まで詳細に検証できるのは非常に助かります」と山口氏はいう。これにより、設計部や現場担当者との調整がスピーディーに進み、工期短縮やコスト削減に直結している。そして、山口氏は「誰でも直感的に操作できるのがK-D2 PLANNERの良さです。モデルができていれば、クレーン検討をしたことのない社員でもクレーンの位置や体勢がわかり、簡単に検討を始めることができます」と使用感を語る。
 
                  
                  さらに、クライアントや協力業者との打ち合わせにおいてもK-D2 PLANNERは効果を発揮している。「これまでは2D図面で説明するしかなく、なかなかイメージが伝わりにくい状況がありました。しかし、K-D2 PLANNERであれば3Dのシミュレーション画面を用いて干渉箇所や作業の余裕度を具体的に示せます。その場で“これなら安心ですね”と理解していただけるようになり、資料作成も格段に簡単になりました」と村井氏はいう。これにより協力会社や現場の職方との意思疎通もスムーズになり、施工の早期完了につながっている。
                  総務部の永澤隆幸氏も、先述した自社のキュービクル改修工事の際に効果を実感したという。「総務部が説明を受けて上層部に対して説明をするわけですが、資料を見てわかりやすいことが最も大きなメリットと感じました。お客様に提案させていただくときも、平面図や断面図で『赤い丸印をつけたところが干渉します』と説明するよりも、3Dの方が説得力は格段に高いのです。コーポレート部門としても、確かな手応えを感じました」と語る。
                  「これからは好景気の時期に建設された建物を中心に、改修の話が多くなる時期に入ってきます。電気設備関連でもクレーンを使う状況が多くなるので、K-D2 PLANNERを使う頻度はますます高くなるでしょう」と村井氏は予想する。RevitのクラウドサービスACCで利用できるVR機能を用い、事前検討や打ち合わせで活用することも見据えているという。「社内でRevitやK-D2 PLANNERを使いこなせる人を着実に増やし、DXに強い会社にしていきたい」と村井氏はいう。
                  導入前支援での実案件検討から始まり、本格導入の2025年2月から半年ほどで即座に実績をあげている弘電社の事例は、K-D2 PLANNERが安全性と効率性を両立させる強力なツールであるだけでなく、建設業界におけるDXを加速させる可能性を存分に示している。
                
CORPORATE PROFILE
| 会社名 | 株式会社弘電社 | 
|---|---|
| 創立 | 1917年 | 
| 本社 | 東京都中央区 | 
| 事業内容 | 内線事業、社会インフラ事業、送電事業、販売事業など | 
| 代表者 | 代表取締役 社長執行役員 梶川 裕司 |