事例レポート

セムリンクス株式会社 NYKシステムズ

セムリンクスがRebroを核に進める、設計から教育、顧客連携までの刷新

セムリンクス株式会社
西部本部施工統括部テクニカルサポート室 室長 永田 秀行 氏
西部本部施工統括部 主任 塩田 直美 氏
西部本部施工統括部 鳥居 なぎさ 氏
東部本部施工統括部 主席 佐藤 雄一 氏
東部本部施工統括部 主任 小林 基子 氏
東部本部施工統括部 松坂 渚生 氏

BIM推進について、BIMを統括する専任部署を置かずに、現場発の勉強会を起点に全社的な標準化を進めている企業がある。
セムリンクス(旧・住友電設)は有志による社内勉強会を軸に、建築設備専用CAD「Rebro」の活用が大阪・東京の拠点を越えて広がり、新入社員教育もRebro一本化に踏み切った。
専任組織なきボトムアップの取り組みは、どのように全社を動かしているのか。
テクニカルサポート室の永田秀行氏をはじめ、大阪・東京の担当者に話を伺った。

ボトムアップで標準化を進めた「BIM座談会」誕生の背景

1950年の創立以来、電力流通や電気設備工事をはじめ、太陽光発電、通信施設、各種製造プラントまで、ビル・街・世界を舞台に社会インフラ基盤の整備を手がけてきたセムリンクス。BIM推進については、現場が主体となってBIM・DXへの取り組みを地道に広げてきた。
同社では、NYKシステムズが開発・提供するソフトウェア「Rebro(レブロ)」の全社的な導入を決定し、現在移行中だ。Rebroの活用は2020年頃より、協業するゼネコンからの作図指定と、社内のテクニカルサポート室が顧客への基本計画提案に3Dモデルを使いたいという二つの流れから始まった。「3Dモデル一体で表現すると、お客様の反応がすごく良いことは導入段階からすぐに感じました」と室長の永田秀行氏は振り返る。一方で設計部門では2D CADに慣れているため、当初は3Dへの移行はなかなか進まなかったという。

セムリンクス株式会社
西部本部施工統括部テクニカルサポート室 室長 永田 秀行 氏(写真左)
西部本部施工統括部 鳥居 なぎさ 氏(写真右)

転機になったのは、九州のある大型工場案件だ。テクニカルサポート室として受変電・幹線・バスダクト設備のモデルをRebroで作成する中で、永田氏は「3Dモデルが数量の抽出へとつながる、データベースとしての価値に気づきました」という。ゼネコンから求められる概算のボリュームやケーブルラックの全長、配管の貫通箇所数などを、リアルタイムに近いかたちで提示できる手応えを得た。

セムリンクス株式会社
東部本部施工統括部 主席 佐藤 雄一 氏(写真右)
東部本部施工統括部 主任 小林 基子 氏(写真中央)
東部本部施工統括部 松坂 渚生 氏(写真左)

この経験をもとに、永田氏はBIMを統括する専任部署を置かない中で、2025年5月に拠点をまたいだ有志による社内勉強会「BIM座談会」を立ち上げる。「大上段に専任組織や旗振り役の部署をつくるとなると、なかなか動きがとりづらいだろうと思いました。そこで最初は、雰囲気を醸成するところから始めたのです」と永田氏は語る。西日本の設計部門とテクニカルサポート室から始まった座談会は、現場メンバー、技術本部、そして昨年後半には東日本の施工統括部・設計部門へと参加が次第に拡大。今年に入ってからは電気工事以外に、プラントなどを扱う機械設備事業部も加わった。発足時8名だった参加者は、2026年9月現在でおよそ60名に達している。事務局を務める鳥居なぎさ氏は「参加者が増えるにつれて、BIM座談会を開催するたびに参加者からさまざまな反応があり、活発な意見交換が行われています」と語る。

BIM座談会の様子

大阪拠点の塩田直美氏は、設計部署での指定案件をきっかけにRebroを使い始めたという。「当時は誰にも質問できませんでしたが、今では社内外で勉強会を開くまでになりました。現場の若手が意欲的に使う姿が、励みになっています」と、普及の担い手としての実感を語る。東京側で参加する佐藤雄一氏は、かつて2D CADから2.5次元のCADソフトへの移行に5〜7年を要した社内の経験を踏まえ、「本格的にRebroの導入を始めてから、まだ3~4年程度ですが、利用している社員数の推移を見ると、過去事例と比較しても順調に浸透してきていると感じています。2.5次元CADに慣れているぶん、最初こそ操作感の違いに戸惑いもあるようですが、3Dの比率が増えるほどRebroの扱いやすさを実感してもらえています」と語る。

管理事務室断面の3Dモデル
新入社員教育を核に、若手からBIMを浸透させる

BIM座談会での発表と意見交換を重ねるうちに、BIM活用について施工統括部の役員層からも支持を得るようになった。2026年度には、新入社員研修の標準ソフトを従来の2.5次元CADからRebroへ全面的に切り替える経営判断が下った。背景には、前年8月に実施したRebro体験研修への手応えがあったという。前年度の体験研修の反応から得た確信をもとに、全面移行に踏み切った。なお、新入社員はまず川崎テクニカルセンターで半年間の研修を受けた後、大阪・東京をはじめ全国の現場や事業所など各配属先に分かれる。
新入社員教育を担当する小林基子氏は「RebroのCAD講習では、最初に3Dモデルを見ることで建物のイメージをつかみ、"図面を描く"のではなく"部材を組み合わせて建物をつくる"という意識を大切にしています。」と研修内容の工夫を語る。若手社員の3Dへの適応の早さも印象的だ。小林氏は「CGモデル内を歩く講習では、簡単な説明だけで、すぐに操作の感覚をつかんでもらえますね」と若手の順応力を評価する。現場に配属された入社数年目の若手からは、タブレットでBIMデータを閲覧したいという要望も上がっており、施工統括部が対応アプリの検討を進めているという。
学生時代に3Dソフトに触れていたという松坂渚生氏は「Rebroを実際に使ってみて、操作性が高いことを実感しています。使い方次第でかなり効率的な図面作成ができるので、社内でユーザーをさらに増やしていきたいと思っています」と意欲を見せる。

電気室の3Dモデル
BIMデータが生む実務効果と、これからの展望

BIMは3Dモデルだけでなくデータベースとしても優れており、数値化できる点や拾い出しが容易にできる点も高い評価の理由だ。顧客との合意形成においても、BIMデータの効果は具体的に表れている。基本計画の概算段階からボリュームとコストをデータで一緒に示すことにより顧客の理解度が上がり、合意形成がしやすくなる。特に電気工事分野では、バスダクトの発注においてメーカーとのBIMデータそのものを介したやり取りがすでに実務化しており、紙の図面やリストは補助的な位置づけになりつつあるという。
一方で課題も残る。社内の積算ではBIMデータから算出した数量を完全には信頼しきれず、依然として図面を手作業で拾い直す工程が残っているという。この検証作業が残る限り、発注のデータ化にも踏み出しにくいというのが実情だ。そこで新たに試行しているのが、受変電設備の単線結線図と、これまで別々に管理されてきたExcel形式の設備台帳を、属性情報を介してリンクさせる提案である。大規模ビルでは管理対象が数百点に及ぶこともあり、更新の手間や整合性の課題を解消する狙いがある。
現在は、BIMモデル作成での統一ルールの策定を進めている。

統一作図ルール工程のイメージ

その活動を通じて、今後はメーカー各社へ3Dモデルの提供を働きかけ、バスダクト以外の資機材にもデータ連携を広げたい考えだ。ルール検証の実例として、自社所有の川崎テクニカルセンターの3Dモデル化も進めているという。電気設備分野の標準BIMモデルの整備についても、大学の授業用に作成した大規模な設備BIMデータなどを通じて、属性情報を含めた理想形の模索が続く。

統一作図ルールのゴールを示したイメージ

永田氏はこうしたデータ活用を、顧客との関係構築や維持管理(FM)の領域にもつなげたいと考えている。「基本計画から設計、積算、施工、そして維持管理まで、一つのデータが一気通貫で活用される状態を目指したい。これは働き方改革や技術継承という意味でも大きな意味を持つはずです」。現場発の勉強会から広がってきたこの取り組みが、今後会社全体にどのような効果をもたらしていくのか、とても楽しみだ。

CORPORATE PROFILE

会社名 セムリンクス株式会社
設立 1950年
本社 大阪府大阪市/東京都港区
事業内容 各種新築ビル等建造物の電気・空調設備、既存ビルのリニューアル、工場プラントの計装設備などのエンジニアリングサービス ほか
代表者 代表取締役社長 谷 信