事例レポート

株式会社ダイテック

クラウドによる独自のコラボレーション機能とワンモデル運用で建設業の課題を解決

株式会社ダイテック
CAD営業部 部長 山田 修平 氏
CAD名古屋技術部 部長 山田 茂範 氏

ダイテックが2020年にリリースした、建築設備BIMアプリケーション「CADWe’ll Linx」。
建築設備にCADとして長年の実績があり、高いシェアを誇る「CADWe'll Tfas」の後継ソフトという位置づけではあるが、CADWe’ll Linxではクラウドサービスを利用したコラボレーション機能を強化することで、BIM特有の課題を解消してBIM本来のメリットを最大限に引き出すソフトとなっている。コラボレーションによるワンモデル運用を軸とすることの狙いや詳細、また今後の展開について、CAD営業部 部長の山田修平氏、CAD名古屋技術部 部長の山田茂範氏に詳しく話を伺った。

株式会社ダイテック
CAD名古屋技術部部長 山田茂範氏(左)、CAD営業部部長 山田修平氏(右)
BIMの課題を解消するLinxのコラボレーション機能

建築設備CADで35年ほど前に建設業界に参入し、生産性向上と課題解決につながるソフトウェア開発を続けてきたダイテック。全国で9カ所の販売拠点をもち、各地のユーザーの要望に迅速に対応できる体制をとる。2006年にリリースされ、建築設備業界で高いシェアを持つCADWe’ll Tfas(以下Tfas)の後継として2020年3月にリリースされたのが、建築設備BIMアプリケーションCADWe’ll Linx(キャドウィル リンクス、以下Linx)である。

建設業界では昨今の人手不足に加え、2024年から始まる建設業の時間外労働の上限規制が控えている。また、BIMの普及に伴い、BIMモデルの作成・統合でのデータの大容量化、BIMに精通した人材不足といった課題があるなかで、ダイテック CAD営業部 部長の山田修平氏は「私たちはメーカーとして、これらの課題に対してソフト面でサポートしたい。Linx特有の“コラボレーション機能”を活用することが、課題解決の鍵となると考えています」と語る。
建築・設計・設備の関係者間での図面のやり取りは、データ量が肥大化することの懸念から、1階/2階/3階などと図面データを複数に分けて扱い、後で統合するケースが多い。しかし、これでは膨大な容量となる図面を読み込むだけでも時間がかかる。また躯体図や付随する写真データなどは外部からの参照で活用されていることも多く、リンクの設定と伝達が必要となる。Linxのコラボレーション機能では、クラウド上や現場の共有サーバー、自社サーバーなどに建物のモデルをアップロードし、そのデータにアクセスしながら設備モデルを作図・編集し、BIMモデルを構築していく。「Linxでは常に最新の1つのモデルで作業することで図面の統合作業が必要なく、修正や差し替えも共通のデータでの作図・編集で済んでしまいます。複数のユーザーが遠隔地であっても同時に作業できるので、飛躍的に生産性が向上します。このコラボレーション機能によって、新しいワークスタイルが生まれています」と山田氏は語る。

ユーザーに寄り添いながらコラボレーション機能を強化

Linxのワンモデルによる複数人での作業では「シート」と呼ばれる単位で編集権限を持たせることで、各自はシートに加筆修正して戻すことができ、1つのBIMモデルに対して整合性を保つことができる。同時に、シートごとに時系列・時間軸・版で履歴を管理できる「版管理機能」は、定例会など建築・設備間での打ち合わせで、進捗やイメージの共有に利用できる。「現在から過去に遡って図面の状態を手軽に確認できます」と山田修平氏はいう。作図設定や部品データなどは「キャビネット」と呼ばれる領域をクラウド上やサーバー上で共有することによって、会社や現場ごとの作図ルールに従った統一作業が可能。そして、Tfasとも作図設定の引き継ぎや図面の参照などができ、Linxを中心としたワンモデル運用での共同作業ができる。
開発に携わる同社CAD名古屋技術部 部長の山田茂範氏は「実務に耐えうるコラボレーションの実現にこだわりました」と語る。第1のこだわりは、権限を取得する単位をTfasで馴染みのあるシート単位としたことにある。第2のこだわりは「管理するデータの最適化/最小化」にある。「Linxは意匠・構造・設備の全モデルを管理できるのですが、空調ダクト設計者にとって電気設備のシートは通常必要としないように、担当する業務によって必要なシートは異なります。ユーザーは作業に必要なシートのみを取得して、軽量な状態で快適に作業できるのです」と山田茂範氏は説明する。取得したシートの情報などは「ワークベンチ」として名前をつけて保存しておけば、「ワークベンチ」を開くことで作業したい環境が簡単に再現される。第3のこだわりは「データ入出力処理の高速化」にある。これはコラボレーションの枠にとらわれない部分ではありますが、ユーザーの作業時間軽減と快適な操作感を得るための重要な要素となります。「各種のCAD操作はもちろん、Linxドキュメント・Tfas図面・IFCファイルなどの入出力も随時チューニングを行っていて、Tfasよりも飛躍的に高速化されました。随所にマルチコア対応を施しているので、CPUのコア増に伴って高速になっていきますし、今後のバージョンアップでもさらなる高速化を予定しています」と山田氏は語る。

シート単位での権限管理イメージ
連携強化で利活用の幅を広げていく

コラボレーション機能を活用したワンモデル運用では、さまざまな通常の作業や施工業務でも、さらなる業務効率化を図ることができる。LinxではBIMモデル上の干渉個所を建築・設備間でリアルタイムに共有でき、打ち合わせや修正作業を円滑に進めることが可能。また、座標情報や画像を含む干渉個所をExcelのリストに出力でき、作業者はそのリストをクリックするだけで、BIMモデルに移動して干渉個所を表示できる。
さらにLinxのBIMモデルでは、すべてのオブジェクト情報をデータベースとして扱うことができるので、管理業務の効率化も図ることが可能だ。「例えば系統管理機能では、階ごとの配管や幹線などの系統情報を視覚的に色分けしたり、部屋やエリアごとの風量や負荷容量といった情報の確認や活用もでき、設備の見える化を実現します。将来的には、工程進捗管理や機器器具の仕様性能の検討もできるようになります。発注管理では1つのモデルで管理しているため、ダンパやスリーブなどを抽出し、未発注・発注済みといった状況を確認して発注指示書や製作書の作成に活用できます」と語る。

Linxでの系統管理機能

なお、ワンモデル運用では3Dモデルやソフト同士での連携が必要不可欠となるが、LinxはBIMの標準フォーマットであるIFCの活用が可能だ。また、プラグインを利用したRevit連携では、IFCでは対応できない接続情報の相互管理および変換後のデータ編集もできる。メーカー機器や技術計算ソフトとの連携では、三菱電機のMEL-BIM(空調・換気)やPanasonicのルミナスプランナーなどとの連携を実現している。「BIMは静的なものでなく、常に流動していく動的なものと捉えているので、他社のCADを含めてほかのアプリケーションと柔軟に行き来できる連携を一層強化していきます」と山田茂範氏は語る。
テレワークも進む現在、コラボレーション機能へのニーズは一層増えることが予想される。Linxのコラボレーション機能は現在、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を中心に利用できるが、業界標準となっている「Box」など、ほかのクラウドサービスにも対応していく予定だという。営業部 部長の山田修平氏と技術部 部長の山田茂範氏の両氏は「今後は施工の過程を可視化して時間軸も含めて管理できるようにするなど、より実務に沿った運用を支援するためのユーザー管理機能も実装する予定です。これまで以上に多くのユーザーに活用いただけるはずです」と確信を込めて語った。

CADWe’ll シリーズの連携イメージ図

CORPORATE PROFILE

会社名 株式会社ダイテック
創業 1969年
事業内容 建設業向けCADの開発・販売、住宅産業向けクラウドの開発・提供ほか
本社 東京都品川区
代表者 代表取締役社長 野村 明憲