事例レポート

上村建設株式会社 アンドパッド

ANDPAD×BIMデータで自社だけではなく「現場全体の作業効率化」に挑戦

上村建設株式会社
BIM推進室 室長代理 上村 祐輝 氏

建築の設計部門で作成するBIMモデルを工事現場に引き継いで管理する活用は、閲覧環境の違いやデータ容量が障壁となり、なかなか進んでいないというケースが多いだろう。その中で、マンションを中心に施工また設計施工を行う上村建設では、BIMデータの閲覧記法を持つクラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を導入。設計と現場の間でシームレスまたタイムラグなく3Dの情報を共有し、品質管理に役立てている。
効率化を進めることで残業を減らし、業務改善に役立てたいという上村建設 BIM推進室 室長代理の上村祐輝氏に、ANDPADを活用することのメリットを詳しく伺った。

BIMデータを活用できるクラウド型建設プロジェクト管理サービス

福岡の地で、賃貸マンションを中心に公共施設や商業施設、物流施設など、さまざまな建物の建築工事一式を行う上村建設。社内でDX化を進めてきた上村建設は、2020年にBIM推進室を設置した。ほぼ同時期に、施工管理のためにクラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD(アンドパッド)」を導入。2023年初頭からはANDPADがBIM情報を共有するツールを実装することに合わせて、さらなる効率化を図っている(2023年7月に「ANDPAD BIM」としてβ版がリリースしている)。
上村建設 BIM推進室 室長代理の上村祐輝氏は、前職の設計事務所でArchicadを長年にわたり使用していたことから、上村建設の設計室でもArchicadのライセンスを取得して導入。同時に新設したBIM推進室は現在、兼務を含めて10名ほどが所属し、設計フェーズでのBIM活用を進めてきた。また、現場を一元管理する方法を検討し、施工管理サービスとしてANDPADを導入した。上村建設では、以前は写真管理ソフトなどをさまざま試していたというが、ANDPADで一括して工程管理を中心に業務改善を進めることができ、効率化につながったという。
ANDPADで現場でもBIMモデルを活用することは、必然の流れであったと上村氏は振り返る。「クラウドで一元管理できることが、ANDPADの最大のメリットです。社内の現場監督などへの説明には開発元のアンドパッド社のサポートを受けて、コミュニケーションをしっかりと取りながら推進してきました。さらに、2024年春に予定されている残業規制に対して、BIMを活用することで現場業務を軽減し、効率化できないかと考えていたところ、現場ですでに利用しているANDPADでBIMデータの活用も行えることを知り、導入することにしました」。

上村建設株式会社
BIM推進室 室長代理 上村 祐輝 氏

現在、上村建設の手掛けるマンションのうち、設計施工の案件は9割ほどを占めている。さらに、施工案件も合わせて、BIMデータ活用を適用できる工事前の物件を選定。4月・5月に着工した設計施工案件4件と他社設計案件3件の計7件で、ANDPADでBIMデータ活用を行い、業務効率化を一番の目的に、その使い勝手を検証している。9月上旬時点では、地階や地上1〜2階の躯体を建設中という。

BIMモデルを現場でリアルタイムかつ容易に閲覧

上村氏は「初めて施工のフェーズで取り組むので、まずはBIMデータ活用で効率的なところに狙いを定めて適用することにしました」という。RC躯体では設備との干渉チェックからはじめていき、仮設足場では工程に合わせた施工計画をモデルにし、ANDPAD上で表示。鉄骨の躯体では設計と製作図、構造と設備の干渉チェックを含めて行う予定だ。現場の進捗に応じて進めているのが現状ではあるものの、すでに仮設足場とRC躯体工事では、効果を上げてきたという。
BIM推進室は、Archicadで作成したBIMデータをIFC形式に書き出してANDPADのクラウドにアップする。そうすれば、現場関係者は自らのデバイスにダウンロードすることなく、ボタンをクリックして開くだけで最新の3Dモデルを手元のiPhoneやiPadで閲覧できる。「計画している内容が現場で本当に納まるか、誰でも確認できます。BIMモデルを扱ったことがない現場関係者でも、これまで活用してきたANDPAD内で確認できることは大きなメリットでした。ANDPADは、職方でも見れるツールなのです。」と上村氏は語る。

例えば、建設敷地で「裏の道路からトラックをどこまで建物に寄り付かせることができるかを確認したい」という現場からの要望に対して、BIM推進室ではトラックの寸法をモデルに落とし込んで搬入・搬出の検証を行い、現場関係者は現場でその画像を見ながら詳細まで確認できた。また、鉄骨造の現場ではモデルをビューアで見ていたところ、鉄骨の梁とシャッターボックスが干渉していることを発見し、不具合とロスに伴う損失の回避に役立った。上村氏は「鉄骨造の現場監督が気になっているところを先に見て、発見できるのはとても高いメリットです。また、ANDPADでは建物を水平・垂直方向だけでなく、斜め方向に切った面を見ることができます。複雑な階段の納まりを現場と共有して確認するなど、思いのほか役立っています」という。
そのほか、ビューアではあらかじめ「ビュー」を保存しておくことで、1クリックまたはタップで指定の位置にすぐに移動して閲覧できる。また、指摘が必要な個所ではコメント機能で補足説明や修正依頼を共有することができる。協力会社への情報の共有は、事前にアカウントを付与しておけば行える。「閲覧権限も1つの画面で仕分けできるので、情報の流出に対しても安心して運用できます。ANDPADは、ライトに使えて協力会社にも手軽に見てもらえる点も大きなメリットです」と上村氏は語る。

残業時間を減らす取り組みにつながるBIMの現場活用

現在の導入状況について上村氏は「現場でBIMモデルをどう使えるのかという情報共有ができていないところがあったので、いまは現場で本当にほしい情報はどのようなことかを、現場監督や若手社員にヒアリングしながら把握しているところです。現場側には、こういう情報があったら便利ではないかと提案し、反応を見てさらに対話を重ねる中で意見を引き出しています。アンドパッド社の徹底したサポート体制は自社とマッチしていて、担当者には生の声を聞いていただきながら寄り添ってもらい、開発に活かされているという実感があります」と語る。

また、進行中のプロジェクトの工期が大幅に短くなるという感触まではないものの「残業時間が減ることは、各工事の現場監督が実感しています。やはり、一つのプラットフォームで共有して協力会社の作業員もモデルを見られることは大きなメリットで、効率は明らかに上がっています。地階と基準階でしっかりと使っていくことができれば、建物全体の効率化にもつながっていくはず」と上村氏は分析する。
さらに上村氏は、自社のみならず工事現場全体での効率化につなげる考えだ。正式リリースが予定されている「ANDPAD BIM」で現場関係者が常に最新BIMモデルを閲覧できる体制を整えるとともに、今後は番頭や職長など現場関係者へのヒアリングを重ねながら現場検証を実施し、効果の出る項目を洗い出す予定だという。「どのようなBIMモデルをつくるかという検証ステップを経て、現場全体が効率化できるようにしたい。上村建設では、いわゆる建設業の2024年問題も見据えて、現場でできる限り労働時間を圧縮していく取り組みを続けてきましたが、ANDPAD BIMでさらに効率化を図ることができると確信しています」と上村氏は期待と展望を語った。

上村建設株式会社
BIM推進室 室長代理 上村 祐輝氏(写真右)、BIM推進室 金 エニ氏(写真左)

CORPORATE PROFILE

会社名 上村建設株式会社
設立 1959年
事業内容 総合建設業(賃貸マンション、分譲マンション、商業施設、物流施設などの企画・設計・施工・リノベーション及び、公共施設の施工)
本社 福岡県福岡市博多区
代表者 代表取締役社長 上村 英輔