事例レポート

株式会社ダイテック

コラボレーションと利便性を追求する、建築設備業向け次世代BIMアプリ「CADWe’ll Linx」

株式会社ダイテック
取締役 CAD事業統括 菊池 泰彦 氏
取締役 技術部門統括 芦原 司 氏

建築設備業向けCADとして長年の実績があり、高いシェアを誇る「CADWe’ll Tfas」。
その後継ソフトとして開発元のダイテックがリリースした完全3D CADが「CADWe’ll Linx」である。
BIMに対応するアプリとして、またプラットフォームとしての利用が見込まれるソフトの特徴と今後の展望について、CAD事業統括の菊池泰彦氏、技術部門統括の芦原司氏に詳しく話を伺った。

BIM対応とクラウド管理でワンモデル運用が可能

建築設備CADで35年ほど前に建設業界に参入し、生産性向上や課題解決につながる製品開発を行ってきたダイテック。販売拠点は2022年夏に開設した2ヵ所を含め、全国で11ヵ所を持ち、全国のユーザーに、迅速に対応できる体制をとっている。1997年にリリースしたCADWe’ll CAPE(キャドウィルケープ)では、技術者一人ひとりが使用するCADとして普及。2006年にリリースしたCADWe’ll Tfas(キャドウィル ティーファス)では簡便な操作での3D表示を実現し、利用者がさらに拡大。建築設備業界で多くのユーザーに支持され、高いシェアを持つソフトとなっている。
そして、ダイテックは2020年3月にCADWe’ll Linx(キャドウィル リンクス)をリリースした。同社のCAD事業統括の菊池泰彦氏は「近年では3Dモデルの高精度・高精細な表現やBIMの進化に伴い、CADに求められる分野が広がり、図面を描くことに特化していたCADWe’ll Tfas(以下、Tfas)でカバーしきれない範囲が出てきました。そこで完全3DとBIMへの対応ができる製品として「CADWe’ll Linx」(以下、Linx)を開発したのです。Tfasは図面を描くことに特化していましたが、新しい挑戦として、コラボレーションや、より柔軟なカスタマイズなどを実現するためにLinxの開発に取り組んでいます」と語る。

株式会社ダイテック
取締役 CAD事業統括 菊池 泰彦 氏(右)、取締役 技術部門統括 芦原 司 氏(左)

Linxの大きな特徴は、3つある。まず、Linxでは建物全体を1つのモデルデータとして扱い、複数人で作業ができる点だ。同社の技術部門統括の芦原司氏は「これまでは複数人が同じプロジェクトで作業する場合、それぞれが作図した図面を最後に合わせてモデルを作成していました。Linxではモデル全体を一元管理し、最初からワンモデルを複数人で協働しながら作業できます。例えば、同じ建物の階ごとに別々の人がリアルタイムに作図していくことが可能で、常に最新のモデルを扱えます」と説明する。2つ目に、BIMモデルをデータベースとして管理することで、オブジェクトの情報を入出力できることだ。そして、3つ目は、Tfasで作成した過去の図面データをLinxに読み込んで3Dモデルとして利用できるという点である。「私たちはユーザーの皆様が作成してきた図面資産を最大限に活用できるようTfas、Linx間での相互データ読み書きを可能にしています。シートやレイアウトなどの環境も移行でき、例えば10年前にTfasで作図した新築物件の図面データを改築工事ではLinxで活用することが可能です」と芦原氏はいう。LinxはTfasの図面資産や利便性を受け継ぎながらBIM対応ができる、強力なツールといえる。

  • ワンモデル運用によるワークシェアリング
  • BIMモデルから全ての属性情報を出力し、各種表作成の業務改革を実現
  • Tfasの後継ソフト
建築設備業界のプラットフォームを目指すLinx

「BIMモデルには大量の属性情報が必要であるため、BIMへの対応を考えると、さまざまなツールやサービスとの連携は欠かせません。Linxは、建築設備業界のプラットフォームとなることを目指しています」と菊池氏は目標を語る。「Excelを使って情報を編集し、結果をモデルに反映したり、ほかのアプリケーションのデータから帳票を作成するなど、Linxでは積算などの外部ツールと連携して確実に情報を受け渡せるようにしています。複雑な操作やオペレーションを必要とせず、図面を完成させていく中で知らないうちに簡単にデータが入っていく。まさしくBIMとして必要なデータが揃った状態で活用できる製品を目指しました」と芦原氏はいう。ユーザーからの要望の多かったAutodeskのRevitとの連携については、新たに開発したRevit用プラグインを利用することで、LinxとRevit間の相互ダイレクトリンクを実現。変換後にも、相互のソフトでのモデル編集が可能となっている。ほかのソフトについても、IFCをベースに情報の連携はスムーズに行うことができるという。
LinxではTfasの直感的な操作性を踏襲しているが、さらに踏み込んだカスタマイズ機能を追加している点も、大きな特徴だ。Linxでは、あらかじめ決められた手順でいくつかのコマンドが一つのコマンドのように扱える「マクロ機構」を搭載。「マクロを使うことで、例えばExcelからLinxに問い合わせ、数量を拾うことができるようになります。そして、Linxでは実装する多数のコマンドをマクロ内で実行できるため、ユーザーは自由に組み合わせることで、カスタマイズ機能を柔軟に活用することができます」と芦原氏は説明する。Linxはマクロによってカスタマイズやほかのシステムとの連携を実現することで、設計から施工、運用まで、幅広く業務の生産性を向上させるBIMアプリケーションとなっている。

  • 3D作図・編集による大幅な生産性の向上
  • CADWe’ll LinxのBIMモデル作業フロー
高機能化・省力化・利便性向上に同時に取り組む

ダイテックはLinxを「次世代BIMアプリ」と位置づける。菊池氏は「Linxのネーミングは、“つながる”ことを表すリンクと、“無限の可能性”を表すxの組み合わせに由来します。開発当初からのコンセプトとして、カスタマイズの自由度によってさまざまなものとつながること、またコラボレーションの機能を通して人と人がつながりデータや図面のシェアができること、外部のソフトとリンクすることの3つを挙げてきました」と振り返る。
芦原氏は「そして、何よりも簡単にできることを目指しています」と付け加える。「BIMモデルをつくるといっても、現場では誰がデータを入れるのかという問題があります。Linxでは、普通の作業をしていけば自然とBIMモデルが育っていくソフトを目指しています。個人的に、BIMは静的なものでなく、常に流動していく動的なものと捉えているので、他社のCADを含めてほかのアプリケーションと柔軟に行き来できるようになる連携をいっそう強化していこうと考えています」。
そして、将来的なLinxの方向性として、高機能と省力化、利便性という3つのキーワードを同時に進めていくとしている。菊池氏は「BIMが高度化するにつれて、CADも高機能化は避けて通ることができません。しかし、それによってオペレーションが大変になったり、複雑さと同時に煩雑さや作業量が比例していっては生産性は上がりません。少しでも省力化につながるよう、AIによる施工支援やNGチェックなど、図面作成業務を楽にするような機能も同時に搭載していきたいと考えています」と語る。
「使いやすく簡単」という方向性は、ユーザーの声を拾い重視してきたダイテックならではのもの。ダイテックは設備CADを中心としながら、住宅現場での情報管理ツール「現場Plus」などの開発も行っているが、これもニーズに応える姿勢が現れたものといえる。2022年10月には、「現場Plus」を建築設備業向けにブラッシュアップした「現場Plus TF」をリリースした。「弊社は住宅業界向けのクラウドサービスや土木CADも展開しており、建築設備業界だけではなく、建設業全体を支援する存在になりたい」と語る菊池氏と芦原氏。現場に寄り添いながら新たな開発を進めるダイテックの挑戦の今後が、大いに楽しみだ。

CORPORATE PROFILE

会社名 株式会社ダイテック
創業 1969年
事業内容 建設業向けCADの開発・販売、住宅産業向けクラウドの開発・提供ほか
本社 東京都中央区
代表者 代表取締役社長 野村 明憲