株式会社フクダ・アンド・パートナーズ Catenda
独自ビジネスモデルで成長するベンチャー企業がCatenda Hubを採用。
事業を支えるベテラン設計者のBIMモデル活用を促進
株式会社フクダ・アンド・パートナーズ
設計・建設支援本部 執行役員 副本部長 設計第一部 部長 千石 達也 氏
設計・建設支援本部 設計第一部 BIMシステム推進課 課長 嘉数 貴拓 氏
設計・建設支援本部 設計第一部 BIMシステム推進課 担当課長 樋口 晃子 氏
株式会社グローバルBIM
営業本部長 吉田 敬一郎 氏
リソース配分の最適化という観点からは、設計者が手慣れた2DCADツールで線を引き、BIMオペレーターがBIMモデルを作成する分業体制はBIM導入の選択肢の一つである。一方でこうした分業には、設計者によるBIMモデル活用が難しくなるという問題点がある。コ・ソーシングサービスという独自ビジネスモデルで右肩上がりの成長を続ける株式会社フクダ・アンド・パートナーズは、このジレンマを乗り越えるべく、Catenda社のopenBIMに準拠したオープンデータストックCDE「Catenda Hub」を情報共有基盤としてエンタープライズサービスを採用。直感的な操作でBIMモデルが視認できる特長は、ステークホルダーとの合意形成の迅速化に大きな役割を果たしている。
オペレーターとの分業でBIM導入を実現
フクダ・アンド・パートナーズは、2002年に創業した、建設・不動産に関するさまざまなサービスを提供している会社。その事業領域は、プロジェクトマネジメント(PJM)から設計・監理、不動産サービス(リーシング)、プロパティマネジメントまで不動産活用の全領域に広がる。設計・建設支援本部 設計第一部 千石部長は、同社のビジネスモデルをこう説明する。「ある土地に建つ建物が社会的な役割を果たした後に廃棄され、そこに新たな建物が建てられるという一連のサイクルのすべてを地権者・デベロッパー、事業者といった方々と共に考えていくことが当社の立ち位置になります。ただし施工については、優れた技術力を持つゼネコン各社との競合は当初から想定していません。設立以来、当社は商業施設・物流施設などの領域を中心にサービスを提供してきましたが、近年の物流ニーズの伸長もあり、現在は案件の約9割が物流施設で占められ、物流施設に強みを持つ設計会社としても広く認知されています」。
デベロッパーと事業者を仲介し、業務を受託するという同社のビジネスにおいて重要な存在が、土地利活用の上流段階に切り込み、ステークホルダーの合意形成を図る役割を担う設計部門である。同社がボリューム図と呼ぶ、その土地にどのような施設が建てられるかを表す企画図の作成件数は、修正案件まで含むと年間1000件以上におよぶ。企画図を高精度かつ迅速に作成することは、事業のまさに生命線といえる。同社がいち早く、2015年にBIMを導入した狙いもそこにあった。
「ボリューム図の作成においては、精度が高い提案をテンポよく返していくことがきわめて重要になります。そのため、アウトプット品質の平準化と作業の迅速化の両立は以前から大きな課題であり続けてきました。BIMを活用することで、その課題を解決できるのではないか、と考えたことがBIM導入の第一目的でした」と千石氏は語る。
同社のBIM導入で注目したいのは、設計者が指示を行い、社内外のオペレーターがBIMモデリング・作図を行う分業制がとられる点にある。
「当社に限った話ではありませんが、設計者がやるべき業務は大量にあります。社内のBIMオペレーター育成や、専門会社にアウトソーシングすることでモデリングに対応できるのであれば、設計者はプロジェクトの方針を考え、スケッチを描くというより創造的な部分に集中すべきであると考えています」と千石氏は語る。
設計者の情報共有基盤としてCatenda Hubを採用
BIMによるアウトプット品質の平準化を実現した同社にとり、次の課題はBIMモデルの活用促進だった。オペレーターがモデリングを担当する体制を構築した背景には、設計者が本来業務に集中できる環境を実現することに加え、同社の設計者の平均年齢の高さもあった。即戦力になるベテラン設計者を採用することで、事業の急速な成長に対応してきたことがその理由だ。
「進行中のプロジェクトをBIMモデルで共有できれば、設計品質向上に大きな役割を果たすことが期待できますが、手描きからキャリアをスタートした世代の設計者に、多忙な業務と並行してBIMソフトの操作を習得するのは難しいのが実情です。BIMソフトに頼らず、BIMモデルを共有する方法はないだろうかと考える中、注目したのがCDE(共通データ環境)の活用でした」。
主要なCDEを比較検討した上で、「Catenda Hub」を選んだ理由を千石氏はこう説明する。「CDEをいくつか試用して強く感じたのは、直観的な操作が難しい点と、扱えるデータが限定される点でした。CDEは解決策にならないのではないかと思い始めたときに、モデリングのアウトソーシングを含め、当社のBIM運用を支援いただいているグローバルBIM社から紹介いただいたのがCatenda Hubでした。軽快に動き、シンプルで直感的に操作できることからこれならば行けると判断しました」。
グローバルBIM社の吉田営業本部長は、経緯をこう振り返る。「フクダ・アンド・パートナーズ様のCDE運用では、コストも課題の一つでした。プレーヤーが数名という企画設計段階であれば問題はありませんが、実施設計や設備設計に展開しようとするとプレーヤー数は一気に増え、必要なライセンス数も膨大なものになります。それに伴うコスト面の懸念をお聞きし、プレーヤー数を問わずご利用いただけるCatenda Hubをご提案しました」。
理解しやすいUIがベテラン設計者の活用を促進
フクダ・アンド・パートナーズが最小プランを契約し、Catenda Hubの運用をスタートしたのは2023年のこと。すぐに手応えを感じ、2024年春からはエンタープライズ契約に移行し、全社的な運用を開始している。設計・建設支援部 設計第一部 BIMシステム推進課の嘉数課長は、「Ctenda Hubの中で3Dモデルの重ね合わせができることは勿論のこと、進行中のプロジェクトで発生する課題を3Dモデルや2次元図面と併せて「トピック」に登録し関係者間で共有できることは大きなメリットだと感じています」。また同課の樋口担当課長は、「UIが理解しやすいこともあり、導入にあたり苦労らしい苦労はありませんでした。グローバルBIM社からは簡単なマニュアルを提供いただきましたが、それすら必要ないような形で活用が進んでいます。また、Catenda Hubの場合、ソフトウェアに依存せず意匠、構造、設備などのデータは簡単に、Web上で統合できます。こうした点も使いやすさにつながっていますね」とCatenda Hubの印象を語る。
Catenda Hubの導入効果として千石氏がまず挙げるのは、当初からの狙いでもある設計者によるBIMモデルの活用促進である。「進行中のプロジェクトの最新状況が常にブラウザ上で閲覧でき、細部を確認したり、進行状況を把握できるようになった意義は大きいと考えています。また3Dモデルを設計者が操ることができるようになったことで、我々の顧客であるデベロッパーや事業者の方々の理解度が深まったこともメリットの一つです。合意形成に必要な時間も確実に短縮できています」。
万が一の機密情報漏えい防止という観点から、現時点では顧客へのプレゼンテーションは画面共有によって行うが、今後は属性情報と切り離されたBIMモデルに直接アクセスできる参照用URLを活用し、デベロッパーや事業者との最新情報の共有も検討しているという。
千石氏が今後の課題として挙げるのは、イメージ共有の効果の追求である。「Catenda Hub をはじめとするCDEの最大の意義は、BIMモデルによるイメージ共有が簡単に図れるようになる点にあります。顧客に図面を見てもらい、それを正しく理解してもらうのは簡単ではありませんが、BIMモデルであれば即座に理解いただくことが可能です。ルール上、図面は今後も必要になるはずですが、合意形成はBIMモデルで行い、『後のことは我々に任せてください』という流れで業務を進めていけるのではと考えています。一方で、BIMモデルによる設計品質向上は今も重要な課題であり続けています。それができてはじめて、当社のBIM運用は次のステップに進めると考えています」。
BIMの特性を活用することで設計品質向上を目指すフクダ・アンド・パートナーズ。同社の地道な取り組みにCatenda Hubは大きな役割を果たすことが期待されている。
CORPORATE PROFILE
会社名 | 株式会社フクダ・アンド・パートナーズ |
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創業 | 2002年 |
事業内容 | コ・ソーシング事業(設計監理/PJM/PM/不動産サービス)ほか |
本社 | 東京都中央区 |
代表者 | 代表取締役 福田 哲也 |