事例レポート

鹿島建設株式会社 YSLソリューション

現場情報連携で建設DXを支援 CheX BIMの新たな役割

鹿島建設株式会社
建築管理本部 BIM推進室 課長代理 BIMチーフマネージャー 細田 正紀 氏

2021年1月のリリース以降、大きな反響を呼んでいるYSLソリューションのCheX BIM。
現在は新機能の追加や製品のブラッシュアップを行いながら成長を続け、現場の生産性向上に活用されている。
そのCheX BIMは、BIMデータを介した進捗管理システムである鹿島建設の「BIMLOGI®」(ビムロジ)と連携している。BIMLOGIに対し、検査の進捗状況のデータインプッターとしての役割を担っているのだ。
「BIMLOGI」の立ち上げから取り組みを担当する、鹿島建設 建築管理本部 BIM推進室 課長代理 BIMチーフマネージャー 細田正紀氏にお話を伺った。

BIMLOGIとその背景「すべてのプロセスをデジタルに」

数多くの大型プロジェクトを抱えている鹿島建設。同社ではこれまで部材の製作やそれらの施工状況に関する進捗管理は、担当者が工場へ都度状況を確認し、現場を巡回し集めた情報を、紙の図面にメモやマーカーで色分けすることで対応していた。このため、関係者間で最新の進捗情報を円滑に共有することが難しく、連絡不備等による工事の手戻りや手待ちが発生することが課題だったという。
そこで、現場の進捗情報をデジタル化し各工程の担当者へ連携することで、これらの問題をスマートに解決しているのが「BIMLOGI」だ。工場で製作する各種部材の製作・運搬・施工の各フェーズにおける予定と実績を、BIMデータと連携してBIMLOGIで管理することで、日々刻々と変化する工事の進捗状況をリアルタイムに把握し、関係者間で共有。工事の手戻りや手待ちの発生を減らすことに成功している。

BIMLOGIの概念図。部材ごとに進捗状況をデジタル化してBIMに反映

同社が掲げる「鹿島スマート生産ビジョン」では、「すべてのプロセスをデジタルに」をコアコンセプトの一つに位置付け、BIMを基軸とした全ての建設生産プロセスのデジタル化を進めている。

BIMLOGIの現在

BIMLOGIで実現できることは非常に多彩だ。製作指示、出荷、施工といった建設の土台となる業務や工種別の進捗状況がBIMを介してBIMLOGIに集約される。もちろん各プロジェクトの特性に合わせて対象となる業務や工種は自由にカスタマイズ可能。様々な工事にフレキシブルに対応できる仕組みとなっている。予定と実績は時間軸で管理されており各工程へ連携し活用される。
現場での実績登録は3Dモデルから部材を選択する方法やリストからの選択、部材に貼られた2次元コードを読み込む方法など担当者が状況に応じて選択できる。
これらの機能を使い登録された進捗情報は、様々なシーンに利用される。例えば出来高の情報を抽出すれば、出来高請求を正確かつ容易に照合できるようになったり、BIツールで切り口の異なる集計や分析表示が可能になったりする。これらはこれまで現場単位に毎月手作業で作成する必要があり、作業負担の大きかったこれらの業務がほぼ自動化されるインパクトは非常に大きい。
現在は、日々BIMLOGIに蓄えられていく進捗データの新たな次元での利活用を見据え日々進化を続けているという。

  • 2次元コードを使った進捗情報の登録
  • BIMLOGIの画面。進捗状況が色分けで表示される

建設現場の生産性向上の可能性を秘めるBIMの利活用だが、一番の課題は肝となる現場での進捗登録にあると細田氏は言う。「現場でどう進捗登録してもらうかが一番のハードル。たったそれだけのことに見えるが、無数の部材を扱う現場ではその部材の数だけ進捗登録が必要になる。なんの工夫もなくやってしまうと“進捗登録作業”が新たに発生してしまう。それだけは避けたかった」。
シンプルにして最大の課題。その課題をクリアする鍵はどこにあるのだろうか。
「普段使いができるもので、かつ進捗状況のデータインプッターとしての役割を持つツールが必要だった」(細田氏)。

BIMデータインプッターとしてのCheX BIMとの連携

そんな中、出会ったのがCheX BIMだったという。BIM 3DモデルをiPad上でスムーズに閲覧・操作できるため施工の最前線で利活用できるツールだ。中でも、立体的な視点を活かした配管圧力検査が注目されている。圧力試験器「みるみるくん(レッキス工業株式会社)」とBluetooth接続する事で測定結果を無線で取得し、自動的に合否判定を実施。帳票出力までできるため、配管圧力試験の負担を低減させる事ができるのだ。この機能が同社の設備部門の目に留まった。

CheX BIMと「みるみるくん 圧力試験器III(レッキス工業株式会社)」

「CheX BIMで配管圧力検査を行うことで、検査の負担も低減し、一緒に検査の進捗データもBIMLOGIに蓄えることができれば、一石二鳥で収まりが良い」(細田氏)。そういった思いから、検査業務 兼 BIMLOGIへのデータインプッターとしてのCheX BIMとの連携を決めた。
衛生配管を対象とした配管圧力検査の実証実験の現場でも成功を収め、今後は他のプロジェクトへの展開を検討している段階だと言う。
YSLソリューションが描くBIM構想にある、「普段使いのツールと、施工情報のデータインプッターの両立」は、先進的なBIMソリューションである鹿島建設のBIMLOGIの取り組みによって、実証を得る形となった。

BIMLOGIの誕生と細田氏

このような先進的なシステムであるBIMLOGI誕生の裏にはどの様な経緯があったのか。細田氏に尋ねた。「“鹿島スマート生産ビジョン”を推し進める上で色々な種をまいてきたが、コアコンセプトとなる“すべてのプロセスをデジタルに”を実現するためには当然進捗もデジタル化する必要があった。“進捗管理のデジタル化”――BIMLOGIはそこから始まっています」。
短期間のうちにBIMLOGIの構想からリリースまで成し遂げた細田氏。そのカラクリは細田氏の大学院時代にまで遡る。元々CGや建設に興味があったという同氏は、“バーチャル建設現場”というテーマで研究を行っていたという。鹿島建設入社後の十数年の現場経験を経て、現在のBIM推進室に。BIMLOGIをはじめとする様々な業務に携わっている。
大学院当時は「BIM」という言葉すら耳にすることは無かったというが、まさに時代が追い付いた格好である。大学院時代の研究テーマと、十数年の現場経験から現場の負担を低減させたいという想いを持つ細田氏だからこそ、生み出せたシステムなのだ。

鹿島建設株式会社
建築管理本部 BIM推進室 課長代理 BIMチーフマネージャー 細田 正紀 氏
BIMLOGIのこれから

今後、既存の各種現場管理ツールと連携するなどして、より合理的な現場管理を目指している事から、CheX BIMには今後もデータインプッターとしての進化を期待しているという。「CheX BIMのようなツールから収集した進捗データのその先には、物流との連動も目指している。“BIMLOGI”という名前にはその想いを込めた」という。今後も同社の取り組みから目が離せない。

CORPORATE PROFILE

会社名 鹿島建設株式会社
創業 1840年
設立 1930年
事業内容 建設プロジェクトや都市開発等のプロジェクトに関する調査、研究、コンサルティングなど
所在地 東京都港区
代表者 代表取締役社長 天野 裕正