事例レポート

株式会社近藤設備 YSLソリューション

iPadとアプリで施工の最前線におけるBIMの利活用を実現する「CheX BIM」

株式会社近藤設備 専務取締役 高橋 広平 氏

2019年10月、YSLソリューションがArchi Future 2019で発表したCheX BIM。その後もさまざまな建設関連企業と具体的な利用シーンや運用を踏まえた検討を重ねており、実用化に向けた準備が着々と進んでいる状況だ。
そのCheX BIMに期待を寄せ協力する企業のひとつに、配管工事のスペシャリスト集団である近藤設備がある。“施工の最前線でこそ、BIMをもっと活用して欲しい” という想いが重なった両社が進める取り組みについて、近藤設備 専務取締役 高橋広平氏に伺った。

加工管の設計・製造・施工にBIMを活用

岩手県北上市に拠点を置く近藤設備。自社案件はもとより、日本を代表する大手設備専門工事会社との取引を重ねながら技術を磨いてきた、配管工事のスペシャリスト集団だ。現在は、冷暖房空調設備から給排水衛生設備、消火設備、プラント配管などを手掛ける同社は、もともとは配管工事を専業としていた。2006年、自社加工センターを開設し業界では異例となる加工管の製造領域への進出を機に、設計、加工、施工までをトータルでサポートできる体制となった。折しも建設業では、工期の短縮化や環境負荷への配慮が求められ、プレハブ化やプレカット化が叫ばれた時期。先見の明と進取の気風がある企業だ。

近藤設備の皆さん。一番右席が高橋専務取締役

同社は、自社加工センターの立ち上げにあたり、「正確な図面こそが、製造面でも施工面でも肝になる」(高橋氏)と見抜き、2010年からBIMが扱えるCADソフト「Rebro(株式会社NYKシステムズ)」を導入。加工管の設計段階から施工図レベルの精度で作成し、そのデータから製造を行うことで、大手や他の配管メーカーには難しい、極めて精度の高い加工管の製造を可能にした。一般的に、加工管メーカーは依頼された設計図通りに製造する。だが、それではできあがったものが現場では収まらないという事態が発生してしまう。「我々のBIMを活用した方法であれば、施工時の収まりまでを視野に入れた、精度の高い加工管の設計が可能になる。工期の短縮にも貢献できるだけでなく、製造面でも歩留まりを高くすることができる」(高橋氏)。

近藤設備では、早い段階からBIM CADを導入。精度の高い加工を実現してきた

また、設計変更が発生した際もBIMは強力だという。BIMの3Dモデルを介したコミュニケーションが可能になることで、現場との意思疎通がスムーズになるだけでなく、設計側が変更したデータを工場と現場に同時に伝えることができるため、無駄やミスが少なく、設計変更に強い体制を構築することができたという。都心部などの加工場のスペースがとれない現場や、工期の短縮傾向を背景に、建物で使われる管のほぼすべてが「加工管」というケースも増えているという高橋氏。自社加工センターの開設や、BIMの利活用方法の確立など、時代の流れを捉えた戦略が奏功する同社が次に目をつけたのは、施工の最前線におけるBIMの利活用だった。

プレハブ化で生まれた新たな課題

工場で予め既定のサイズや仕様で製造され、現場での加工作業や廃棄物の発生などを最小限に抑える効果のあるプレハブ化の流れは、都心に限らず建設業界全体で加速している。一方でこれらの取り組みに伴い、新たな課題も生まれているようだ。工場から配送されてくるさまざまな部材が、場所や用途を特定して作られたものであるということは、正しい場所に正しい部材を据え付ける必要があることを意味する。万一誤って据え付けてしまった場合、必ずどこかにそのしわ寄せが行ってしまうことになるのだ。正確な据え付けには、荷受けの際にそれぞれの部材とそれに対応する図面による入念な確認作業が欠かせない。
「もしこれらを紙の図面で提供しようとすると、例えば50~60枚発生する加工図面に対して、その据え付け時の平面図、断面図…となると、簡単に数百枚の図面量になってしまう。現実的にその量の図面を、荷受けや据え付けの際に確認するのは困難。紙の図面に頼ることなく、正しい据え付け位置を確認できるよい方法はないかと模索していた」(高橋氏)。
その中で出会ったのが、YSLソリューションが提供するCheX(チェクロス)だった。

同じ志を共有できるYSLソリューションとの出会い

CheXは、建設業界の生産性向上を目的に提供されているアプリ。iPad上から図面を閲覧できたり、iPadのカメラで電子黒板付きの写真を撮影したり、それらの内容を関係者間で共有したりできるツールとして、スーパーゼネコンを中心にのべ国内外12ヵ国、12万以上の現場で導入されている。これまでは、2D図面を対象に業界をリードしてきたCheXは、これからのあたらしい働き方を提案するべく、BIMデータにも対応する予定だ。
2019年10月のArchi Future 2019に参加していた高橋氏は、「面白いソリューションを展開している横浜の企業がある」とYSLソリューションのブースを紹介されたそうだ。試作中だというCheX BIMは、特定のBIM CADソフトウェアが無くても、iPadさえあればBIMの3Dモデルやプロパティ情報等を容易に閲覧できる。また、ある部材のGUID(その部材を特定する固有のID)をもとに作成されたQRコードを読み込めば、3Dモデル上の対応する部材を瞬時に表示する機能もあった。

CheXBIMの画面の一部。QRコードを読むことで3Dモデル上の任意の部材に、瞬時に移動することが可能

これなら、加工管や製作図につけたQRコードを現場でCheX BIMから読み込めば、正確な据え付け位置を特定でき、好みのアングルで自由に確認することができるから大量の図面も不要になる――高橋氏はそう直感したという。奇しくもYSLソリューションは当時、「BIMを現場に連れていけ」というキャッチコピーを掲げたブースを設営しており、同じ志を持った両社が引き寄せられるようにつながったことになる。その場でYSLソリューションとタッグを組むことを申し出て、すぐに協業が始まったそうだ。

「施工の最前線でこそ、BIMを活用して欲しい」との想いをそのまま書いたという、YSLソリューションの当時のコピー
BIMを武器に

両社はアイデアやノウハウをまとめ上げ、加工管の加工図に付与される「加工番号」をベースとしたQRコードを読み込むことで、該当する単体の部材だけでなく、加工された一連の系統に対する視点切替えもできる、汎用性の高い機能として仕上げることに成功したという。

製作図につけられた加工番号から生成したQRコード

一方で、 “BIMの施工現場での活用はハードルが高い” と感じている設備関係者はまだまだ多く、「超えるべきハードルも多い。」(高橋氏)。それでも「CheX BIMなら施工の最前線でも簡単にBIMを活用できることを、提案や業務を通して広めていきながら、私たちの新しい武器としても活用していきたい」と意気込む。

CheXとの連携を始め、BIMデータの提供や5G時代の活用を視野に入れている(近藤設備の会社案内より)

また、Withコロナ時代の非接触を前提とした状況の中、BIMがあらたな商機を生む可能性をも見据えている。「BIMデータを作れる技術者を育成することで、例えば、大阪のお客様から手書きの下書きを送ってもらい、こちらでBIM 3Dモデル化する。そしてそれをベースとした意思疎通しやすい打ち合わせを行って納品する。CheX BIMが広まれば、こんなことが岩手にいながらできてしまう。弊社に限らずBIMを武器にすることは、地方企業にとっては大きなチャンスを生む」。
まだ一部にとどまると言われるBIMの施工現場の利活用——。この状況に突破口を空けるべく、両社の取り組みは加速していく。

CORPORATE PROFILE

会社名 株式会社 近藤設備
設立 1992年
事業内容 給排水衛生設備、冷暖房空調設備、消火設備、プラント配管、土木工事など
所在地 岩手県和賀郡
代表者 代表取締役 近藤正彦

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