事例レポート

株式会社大林組 ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン

生産性10倍の達成を目指し、サイバー空間上に建設現場をBIM / CIMとアプリで再現・構築

株式会社大林組 土木本部本部長室i-Conセンター / 生産技術本部 先端技術企画部 副課長 湯淺 知英 氏
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社
Project Manager 高橋 忍 氏
Developer Advocate - AEC 竹内 一生 氏

建設現場での生産性向上のためにBIM / CIMデータを活用する取り組みが始まっているが、大林組とユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの協働でさらにその先を行く取り組みが進んでいる。どのような観点とアプローチからこの協働が始まり、具体的にどのような取り組みが行われているのか。
実際の現場に導入しながら検証を繰り返した経緯と達成した様子、そして、その将来像を、大林組の湯淺知英氏と、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの高橋忍氏、竹内一生氏にお話をお聞きした。

BIM / CIMだけでは足りない施工現場の情報をUnityで構築する

「生産性10倍を達成するイノベーションを目指しています」と大林組の湯淺知英氏が語るのは、CPS(Cyber Physical System)の考えのもと、サイバー空間上に施工現場を構築した上で、遠隔による施工管理、膨大な在庫の納品や数量管理のデジタル化、作業員の見える化などを実現する時に起こる変革である。
現場監督や設計業務を担当し、MBA取得のため海外留学中に、デジタライゼーションに傾倒したという湯淺氏。帰国後はプログラミングを学習し、ハッカソンで入賞するなどここでも頭角を現す。そして、大林組では企画部門に参画するようになり、2018年からは東京大学の「東京大学i-Constructionシステム学寄付講座」(代表:小澤一雅氏)にも席をもつ。

CPS System

「建設現場での生産性向上を目的とするi-Constructionでは、BIM / CIMがポイントとされています。ただ、BIM / CIMは、最終的にどういうものをつくるかを見せることはできますが、それだけでは現場の施工管理を行う情報としては足りていません。人がどこにいて、足場がどう掛けられて、重機がどのように配置されるかといった状況を見える化しないと、実際に大きな効果は得られないのです。BIM / CIMよりも、容れ物としてもっと大きなものを用意する必要性を感じていました」。

そうした時に湯淺氏は、前述の東京大学の講座で講師として招待されたユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの竹内氏のレクチャーを受ける。「ゲームのような感覚で3Dの建物データを自在に操っている様子を見て、スピード感に衝撃を受けました。BIM / CIMの上で、いろいろなアプリを開発し活用することが、イノベーションにつながることを確信したのです」と振り返る。早速、湯淺氏はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのチームとの協議に入った。湯淺氏はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの高橋氏、竹内氏らのメンバーが建設業に対しての熱量とバイタリティーが高く、互いにアイデアを出し合える関係であることを感じたという。

竹内氏は「BIMデータを扱うことが近年になってより容易になり、マッチングするいい機会でした」と振り返り、高橋氏は「Unity Reflectがローンチし、日本でも使えるようになった時期と重なる良いタイミングだった」と言う。Unity Reflectは、建設会社で親しまれているAutodesk RevitやNavisworksに対応し、ワンクリックでUnity側にインポートできるプラグインである。BIM / CIMで各オブジェクトに紐付けられたメタ情報を、欠落させずにUnity側に移管できることが特徴だ。「開発プラットフォームのUnityでは、インポートした後にユーザーがカスタマイズして機能を追加できるので、実装してから理想のアプリケーションをつくることができます」と竹内氏はメリットを語る。湯淺氏も「建設会社からすると、Revitなどは使い慣れていても、Unityはまだ馴染みが薄い。Unity ReflectはUnityへの取り込みがほぼ自動化されているので、躊躇することなくベースとすることができました」と語った。

Unity Reflect
現場で検証しながらデータをUnityに実装

湯淺氏は、実際に工事が行われる現場から、東京都23区内の1つの現場を選定。2次元の図面だけで工事が進められている現場で、Unityを用いたBIM / CIMの適用を試行した。「施工中の現場をサイバー空間に再現・構築するには、必要な4要素があります。それが「1. BIM / CIM設計情報」、「2. 環境情報(周辺道路、資材残置状況、安全設備など)」、「3. 重機情報(クレーンなど)」、「4. 作業員情報」です。

4要素

これらの情報を、アプリケーションに入れていくことにしました」と語る。高橋氏は「まずは、アプリケーションの中に現場をいかに再現するかを考えました。どのような情報があれば現場監督に使ってもらえるようになるのか、実際に現場を訪問し、現場監督や湯淺さんを質問攻めにしました」と振り返る。現場のヒアリングを終えたユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのチームは、必要な情報を追加で入れていくことも提案した。「その1つが、現場の写真を撮ってフォトグラメトリにすることでした。日々の現場を管理するために毎回点群をとるのは工数がかかるので、日々の写真のデータをつなぎ合わせて3Dと同期しようというのが最初のチャレンジでした」と竹内氏は語る。
湯淺氏は「追加したデータの中で重要と気づいたのは、支保工や足場でした。これらは仮設といって工事が終わると撤去するものですが、デジタルで再現できることのインパクトは大きいものでした」という。
また湯淺氏は「作業員の複数のIMU(加速度計等)のセンサーを付けて測定したデータをUnityに送り、作業動作をモデル化したことも有効だった」と語る。高橋氏は「センサーからはデータを加工することなく、付属のアプリでコンバートするだけでUnityに取り込めました。建物にリアルな人のデータを入れた瞬間に、現場としてのリアリティが増して驚いた」という。竹内氏は「世の中にいま出ているホットな技術はUnityで取り込むことができ、すべて再現できることが強み」と補足する。湯淺氏は今回、自らiPhoneで撮影した写真データを用いたが、将来的には現場監督のヘルメットにカメラを付けるなどして自動でデータを得たい、とする。「最新技術を使うことが目的になってはいけない。あくまでも新たな負担とならず、手間をかけずに写真や動画が現場で取集され、サイバー上の現場が毎日勝手に積み上がっていくようなストーリーを描いています」。

左からユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 竹内 一生 氏、大林組 湯淺 知英 氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 高橋 忍 氏
プラットフォームとしてのさらなる展開

BIM / CIM以外の情報をUnityに取り込むことで、BIM / CIMデータの価値が上がることを確認した湯淺氏とUnityのチームは、さらにデータを取り込むことにした。湯淺氏は「フォトグラメトリでは近隣の状況まではわからないため、点群データを入れて描写することにしました。特にこの現場では、前面道路の幅員が6mと限られていたので、周辺状況を把握することが重要なポイントだったのです。半日ほどの作業でデータの取得から送信まで行えたので、それほど手間はかからないと思います」と語る。さらに湯淺氏はGoogleMapのデータも入れて周りの住宅や道路の状況を入れて、重ねて表示。交通誘導員や作業員、また重機の配置に役立てることができた。「ほぼ再現できている現場の状況を見ながら施工計画を立て、事前に検証した上で工事をスタートできるという状態までは到達できたと思います」と湯淺氏は語る。

CPS アプリ構想
Application

高橋氏は「アプリケーションが面白いのは、頭の中で考えていたことを実際に開発して共有しながら確認していくと、次の要求がどんどん出てくることです。ほかのソリューションサービスとの連携も、Unityがハブとなって一元化して対応できるはず。ただ、すべての機能を網羅したアプリを作ることがゴールではなく、使用者がカスタマイズできるベースとして仕上げることで、建設業界にプラットフォームが広がってほしい」と語る。
新しい発想で、サイバー空間上の建設現場の「既存のBIM / CIMを超えた大きなプラットフォーム」の姿を捉えた、大林組とユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのタッグ。現状の20%~30%の効率向上ではなく、現状の10倍の生産性向上を目指す姿勢こそ、建設業界の生産性を飛躍的に向上へと導くのに必要なスタンスだと感じた。

CORPORATE PROFILE

会社名 株式会社大林組
創業 1892年 設立 1936年
事業内容 国内外建設工事、地域開発・都市開発・その他建設に関する事業ほか
所在地 東京都港区
代表者 代表取締役社長 蓮輪 賢治

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