事例レポート

SB C&S株式会社 SB C&S

変革の時代を迎える建設業界の課題をビジュアライゼーションとXRにより4社連携で解決へと導く

SB C&S株式会社 遠藤 文昭 氏(ファシリテーター&mixpace担当)
アドビ株式会社 市場戦略部 古田 正剛 氏
オートデスク株式会社 AECテクニカルスペシャリスト マネージャ 菱田 哲也 氏
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社 Developer Advocate – AEC 竹内 一生 氏

建設業界の労働人口不足や、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で働き方が大きく変わる中で、デジタル化による効率化に期待が寄せられている。
その中で、ビジュアライゼーションや拡張現実のXR (VR / AR / MR) 分野で開発などに取り組んでいるSB C&S、アドビ、オートデスク、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは企業間を超えた連携を進めている。
連携の背景と具体的なソリューション、またさらに将来に向けてのビジョンを、4社の座談会というかたちで語っていただいた。

近い将来を見据えたデータ連携の取り組み

建築や建設の現場でデジタル化への期待が高まり、急速に普及が進もうとしている背景には、業界全体の危機感がある。それは世界規模で進む建設業界の就労人口の急速な減少であり、働き方の変容である。イギリスの建設業の研究団体「Construction Innovation Hub」のレポートによると、5年後には既存と同じ作り方をする建設会社の数は半分ほどになり、プレハブ化によって現場での省力化がさらに進むことが予想されている。
こうした近い将来を見据え、ビジュアライゼーションとXRで連携を進める、SB C&S、アドビ、オートデスク、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの4社の担当者に各自の特徴はどこにあり、また互いの強みをどのように活かしているのかについてお話を伺った。

左上:SB C&S 遠藤 文昭 氏、右上:アドビ 古田 正剛 氏、左下:オートデスク 菱田 哲也 氏、右下:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 竹内 一生 氏

SB C&Sの遠藤文昭氏は、パソコンの創成期から歴史が始まったソフトバンク創業事業が、時代の変化に合わせてソフトウエア流通事業から総合流通事業、メーカー事業、サービス事業へと事業を拡大してきたことを紹介。ICT事業でもハードとソフトの両面で流通を支えてきた中で、現在は建設業や製造業向けに「mixpace(ミクスペース)」の事業も展開している。同製品は3DCADやBIMで作成した設計データを自動でAR / MR用データに変換し、HoloLens 2やiPadで表示するサービスであり、シンプルな手順でリアルな空間にバーチャルなオブジェクトを重ね合わせ、レビュー・検証・デモなどさまざまなシーンで活用できる。Microsoft Azureのクラウドに3DCAD / BIMデータをアップロードする際にはオートデスクのFORGEによりデータを変換し、デバイスを活用しAR / MRを体感する際にはUnityが使われる。「2020年5月には、mixpaceクラウドサービスで変換した3DデータをGLB形式やUSDZ形式で直接ダウンロードして活用できる機能を追加しました。GLBファイルをAdobe Aeroに取り込んだり、USDZファイルをiPhoneユーザーに配布したりして、デバイスや場所を選ばず、AR体験を数多くの人に届けることができます」と遠藤氏は語る。

mixpace

アドビの古田正剛氏は、建築や製造の設計分野に向けて3Dテクスチャリングの表現に特化した「Substance」を紹介。Substanceは、元々はビデオゲームで使われていたソリューションだ。「物理演算に基づいた生成でフォトリアルな表現を行うことで、モデリング工程の短縮と、没入感のある体験を現在でも可能にしています」と古田氏は語る。Substanceでは、ゲームエンジンをUnity、モデリングとアニメーションをオートデスクと連携。昨今では、Unityのロンドンや東京・銀座のオフィスがフォトリアルなCGで再現された際に、オートデスクの3ds Max、Revitで製作されたモデルと連携するかたちでSubstanceが使用されている。操作感が軽く、リアリスティックでパラメトリックに変化させられる表現は大きな話題を呼んだ。

Substanceの画像
API公開などによる他社製品連携やBIMデータ連携の強み

オートデスクの菱田哲也氏は、国土交通省のBIM推進会議によるガイドラインを参照しながら「企画から運用までのどの段階でも、また意匠、構造、設備のいずれの分野でも、今後は意思決定のスピード感がとても重要になってくる」と指摘。「例えば、オーナー様やユーザー様との意思疎通の方法としてビジュアライゼーションがあるが、以前はビジュアライゼーションをする際には、BIMデータから新たにモデルを立ち上げることが必要でしたが、Autodesk Revitのモデルをインポートしてくれば、モデリングで1週間ほどかかっていた工程が数分で完了します」と語る。近年では複数のユーザーで動画の同時編集を行えるソリューション「Shotgun」や、BIMのデータ等を皆で閲覧編集できる「BIM360」など、クラウド上でのプラットフォームも普及が進んでいる。「ShotgunやBIM360に限らず、オートデスクはAPI公開により他社製品と連携ができることが大きな特徴です。高品質な3DCG画像や動画の作成、XRのための3D制作、シミュレーションなどで、さまざまなパートナーが3ds MaxやMayaとのデータ連携のために多様なツールを開発しています」と菱田氏は語る。

3DS MAXの画像

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの竹内一生氏は、UnityがXRなどのコンテンツの開発や、アプリケーションが作成できるソフトウェアであることに言及しつつ、ゲーム、建築・建設、自動車、航空などの分野で使用されていることを紹介。特に建築系のソリューションのために開発されたプラグインのUnity Reflectは、「建築のBIMデータを欠落なくUnityに移行して活用できることが特徴です。例えば、RevitのBIMモデルを操作している人が1クリックすれば、データ形式の変換をせずにクラウドを介して複数の人がさまざまなデバイスで見ることができます。さらにビジュアライゼーションのためだけではなく、BIMのメタ情報も含めて持ってくることができるので、付加価値の高い状態でデータを活用でき、設計者やクライアントだけでなく現場の監理や工事の担当者など、幅広い方々の合理化と効率化が図られます」と語る。
BIMモデルは、さまざまな局面で活用されることが期待される一方で、扱える人材やスキルの確保が課題となる。SB C&S、アドビ、オートデスク、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの各社が連携することで、利用者がオペレータや特別な操作を必要とせずに、誰でも扱え、活用できる状況が実現している。

Unityの銀座オフィスのCG画像
今後変わっていく建物の作られ方とデータの活用法

高次元のデータを建築業界でも活用できるようになったことは、建築業界全体の流れを変えつつある。
菱田氏は、イギリスのBryden Woodが取り組む例を挙げる。「Factory in a Box というプロジェクトでは、コンテナに載せられるアセンブリをRevitのファイルとして並べたDigital WareHouse(デジタル倉庫)を活用し、短期間での設計及び施工・組み立てを実現した。この事例では、パーツに色分けを施すなどして組み立てるように製作することで、工期の大幅な短縮を実現しています。この工事を行った従事者は建設業に携わったことのない元軍人でした。熟練工でなくても制作できるようにしたのです。ものの作られ方が今後変わっていくことを想定しておくべきでしょう」。
竹内氏は「今後は道路などのインフラについて、現実空間のデータがパブリックになることが予想されます。その中でUnityは、さまざまなデータやテクノロジーを集約できるプラットフォームであり続けます。そうしてBIMユーザーがUnityを活用して、デジタル化をより加速させる状況が出てくるはず。情報同士をつなぎ合わせながらすべてを表現できる世界は、5年以内にできるのではないでしょうか」と予想する。
古田氏は「アドビは、目に見えるものをより効率よく製作できる、汎用性のあるツールを開発し続けてきました。BIMは目に見えないものも可視化することが大きな目標というところでは、アドビのビジュアライゼーションはおおいに貢献できる分野だと考えています」と語る。
遠藤氏は、mixpaceユーザーと接する中で、より多くの用途でXR技術が使われるようになったことを感じ、次のフェーズに移行していることを指摘。「さらにビジュアルを追求したものを見ようという要望が高まっています。そのために5G高速回線とMicrosoftのAzure Remote RenderingとHoloLens 2を連携させることによる活用方法の検証など、複合的に準備を進めています」と展望を語る。
建築・建設業界の多くの課題を解決へと導くことが期待される、ビジュアライゼーションとXR。4社がそれぞれの自社製品を連携して生まれる新たなソリューションは、建設業界がこれから迎える大変革に対応していくための大きな助けとなるだろう。

CORPORATE PROFILE

会社名 SB C&S株式会社
設立 2014年3月
事業内容 法人ICT事業、コンシューマ事業、法人サービスほか
本社 東京都港区
代表者 代表取締役社長 兼 CEO 溝口 泰雄

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