事例レポート

大成建設株式会社 ダッソー・システムズ

西新宿でのスマートシティへの取り組みと新ビジネス開拓
-都庁を含むエリアにおけるデジタルツインを活用した新しい構築プロセス-

大成建設株式会社 都市開発本部 プロジェクト開発第一部 村上 拓也 氏
大成建設株式会社 建築総本部デジタルプロダクトセンターBIM推進担当 池上 晃司 氏
大成建設株式会社 設計本部建築設計第六部 上田 恭平 氏

新都庁の竣工とともに開発が落ち着いた東京・西新宿エリアが約30年の時を経て、スマートシティとして生まれ変わろうとしている。
同地区のエリアマネジメントに、建築・都市分野の専門性を持って中心的に関わっているのが、大成建設である。
都市開発という視点で、西新宿エリアの特性や日本の街づくりの特徴をどのように捉えているのか。また、5Gをはじめとする先端技術で、西新宿エリアは将来的にどう変わり、発展していくことができるのか。
都市計画向けソリューション「3DEXPERIENCity」を活用し「都市のデジタル化」に取り組んでいる大成建設の村上拓也氏と池上晃司氏、上田恭平氏に伺った。

銀座の街で実現したデジタルツインの世界

西新宿エリアでのエリアマネジメントを、10年間にわたって継続している大成建設。都市開発に携わる村上拓也氏は、街づくりでの新たなニーズを実感しているという。「西新宿エリアは1970年前後から開発が進み、東京都庁舎が移転開庁した1991年にかけて再開発された街です。その後に東京のほかのエリアでも再開発が進み、東京駅周辺、渋谷、品川などで新しい街が形成されてきました。西新宿エリアは約50年前につくられた街で、いかに現在と未来の状況に合う状態にアップデートするかが最大の課題となっています。西新宿がもう一度生まれ変わろうとする時、建築物などハードの改変とともに、テクノロジーの力を合わせたセットの提案を行う必要があると感じています」と村上氏は語る。

大成建設では、西新宿エリアのエリアマネジメントを進めるビルオーナーを中心としたエリマネ組織に加入し、事務局として参加。新宿区や東京都とも連携しながら、時に提言も行っている。まちづくりの計画やマネジメントでの課題について村上氏は「現在における都市の課題は、ある特定の分野だけで解決されるのではなく、さまざまな分野にまたがり複雑に絡み合った状態になっていることが大半です。また管理面ではスパンが長く、その時々に合わせて調整をする必要がありますが、担当者は毎年のように変わっていく。そのため、大きなビジョンを掲げつつ、微修正をいかに継続するかが課題となっています」と語る。上田氏も「既存の街はエリアによって成り立ちが異なり、状況もそれぞれ異なります。全体を俯瞰して見ながら個別に対応できる、フレキシブルな仕組みづくりが課題となっています」と指摘する。村上氏は「日本では、地権者であるステークホルダーが多く関わり、丁寧な合意形成を行うプロセスが特徴です。そのプロセスをスムーズに進めるためには、指差し確認ができるプラットフォームが必要ではないかと考えています」という。

左から大成建設 都市開発本部 プロジェクト開発第一部 村上 拓也 氏、大成建設 建築総本部デジタルプロダクトセンターBIM推進担当 池上 晃司 氏、大成建設 設計本部建築設計第六部 上田 恭平 氏

そのプラットフォームとして大成建設が着目しているのが「デジタルツイン」である。これは、都市の3Dモデルを仮想空間に現実空間の双子のように作成することを表す。2019年に大成建設は、ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォーム上の都市計画の向けソリューション「3DEXPERIENCity」を国内の事業者として初めて採用し、東京・銀座の街のデジタルツインを試作した。銀座4丁目の交差点を中心にして、BIMモデルを「3DEXPERIENCity」にてクラウド上で統合。建物をはじめとして道路や街路樹などもデジタルモデルで再現した。エリアでのデジタルツインを活用することで、建物の新築や改修時に周辺や見通しなどの状況が把握できるほか、日照や風などの環境シミュレーションが詳細に行える。そして、エリア全体での運営管理に役立てることが期待されている。

銀座の街で実現したデジタルツイン
銀座の街のウォークスルー画像
デジタルツインによる“超参加型”のまちづくりを目指す

大成建設では銀座の経験をもとに、今年に入り、西新宿エリアでもデジタルモデルの作成をはじめようとしている。街の魅力を高めるまちづくりを進めるために、デジタルツインが活用できるという見込みに基づくものである。上田氏は「これまでの都市計画では全体を見ているようでいて、都市エリアと建物単体は実は別々で考えられてきました。両者を同時に見る仕組みがデジタルツインで可能です。「3DEXPERIENCity」により、地図上ではなく、3Dモデル上で考えることで、大きな変化が生まれるのです。また、デジタルツインで都市と建築の境界が弱まることで、さまざまな人が使えるようになるでしょう」とする。

その例として池上氏は次のようなケースを挙げる。「例えば、イベント情報や工事状況、立ち入り禁止区域などがデジタルツインで色付けがされていき、わかりやすい表示を行うことができます。都市計画の専門家だけでなく一般の方も指差し確認できるようになる。いまの都市の状況がどうなっているかを直感的に見せるツールとして、デジタルツインは有効です」。また村上氏は「例えば、ある施策によって人の流れがどのように変化するかを社会実験を行って観測することは、手間がかなりかかることでした。デジタルツインの中でシミュレーション・分析し、現実にフィードバックすることで、手間もコストも圧縮できることでしょう」と予測する。

そして、都市の複雑な状況をデジタルツインで確認し、共通の認識が持てることは、多様なステークホルダーの意思決定に役立つ、と各氏は強調する。上田氏は「建物と街をフラットで内部と外部空間をシームレスに見ることができるのは、合意形成に役立ちます。またさまざまな人の意見を載せて反映させるには、デジタルツインでオープン化する方が親和性も高いと思います。規模の異なる民間企業や市民の意見を調整していくこれまでの日本のやり方を引き継いだ、諸外国とはまた違ったまちづくりができるのではないでしょうか」と期待を寄せる。村上氏も「これまではまちづくりの基礎資料として、おおむね5年ごとに都市計画基礎調査が行われ、一部の専門家が『街はこうあるべき』と提言して、街に線を引いてきました。これからは、即座に大量のエビデンスデータが得られるようになり、よりパーソナライズ化されたデータを即座に活かすことで、みんなが求める街の姿が見えてくるはず。デジタルツインによる“超参加型”のまちづくりが、西新宿でできるといい」と抱負を語る。

デジタルツインによる“超参加型”まちづくりのイメージ
最先端の技術が人中心の街づくりを実現する

デジタルツインを活用することでもたらされる、街と暮らしはどのようなものか。大成建設のメンバーは、今後の姿を具体的に思い描いている。池上氏は「デジタルツインやIoTによる高度なデータの収集 / 分析などのデジタルソリューションが整い、なるべくシンプルに生活できるのが、私たちが望む未来ではないでしょうか」と語れば、村上氏は「これからは、人中心のまちづくりが求められています。

デジタルツインは、快適で心地よい生活を支えることが大切です。それが人々の満足度を高め、ひいては街の魅力を高めることにつながっていくのです」とする。上田氏は「共通データを元にして意思決定ができると、サービスもトップダウンで与えられるものではなく、ニーズに基づくものになる。そうすることで、支出は抑えられてサービスも向上するでしょう。それが、人中心の街や社会へとつながるはず」と期待を込める。

5G先進区として知られる西新宿エリアでは、自動運転への活用も見込まれている。「1つの街区が100~150mと大きいので、歩いて移動する不便を解消し回遊性を高めるために自動運転の車を導入するほか、観光を含めてより多くの人に使ってもらえるモビリティとしてキックボードなども導入していきたい。

最先端技術を活かした新しいサービス実証

その時には、データを活用しながら適切な配置で実装できるはずです」と村上氏は予測し、「当社はプロジェクトの初期段階から一気通貫で見られるのが強み。ゼネコンとして確実で質の高いデータをデジタルツインに入れていければ、広く市民が使う時にも信頼が置けるでしょう。実際の自治体の反応もデジタルツインの今後の活用について、かなり興味を持っています」と語る。
これから長期にわたって持続可能なまちづくりを行うために、大成建設が注力するデジタルツイン。その構築と運用を実現する「3DEXPERIENCity」は、非常に有効なデジタルツインのプラットフォームだと実感した。

CORPORATE PROFILE

会社名 大成建設株式会社
創業 1873年 設立 1917年
事業内容 建築工事、土木工事、地域開発、都市開発、その他建設工事全般に関する企画ほか
所在地 東京都新宿区
代表者 代表取締役社長 相川 善郎

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